特集 進化し続ける内科診療―世界が認めたブレイクスルー
感染症
HIV感染症―診療の変遷と強力な多剤併用療法
青木 眞
pp.134-138
発行日 2013年1月10日
Published Date 2013/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402106618
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診察室に患者が入るやいなや,時候の挨拶後に簡単な問診を含む診察,大変順調である検査データの説明がなされ診療が終わる.早ければ5分もかからない.今日のHuman Immunodeficiency Virus(HIV)感染症外来の風景を通常の高血圧や糖尿病外来のそれと区別できる人はいないだろう.それほどHIV感染症診療は高度に標準化され,診療目標(≒CD4陽性リンパ球を高く保ち,ウイルスの増殖を検出限界以下まで抑えること)の達成率が高いものとなっている.
振り返ると筆者の患者の多くが10年以上のお付き合い,なかには16,17年フォローしている方もいる.しかし,それ以上長いお付き合いの症例はない.なぜなら1990年代半ばに起きた治療上のブレイクスルーに間に合わなかったそれ以前の症例は100%近く亡くなっているからである.逆にブレイクスルーの恩恵を受け,現在通院中の患者の多くは天寿を全うするであろう.その意味では,HIV感染症診療に起きたブレイクスルーは黄色ブドウ球菌感染症にペニシリンが導入された時と同程度のパラダイムシフトに違いない(図1).
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