書評
―山下武志,野上昭彦,髙橋良英 監訳―不整脈治療のThe Basics―臨床に役立つ電気生理学
栗田 隆志
1
1近畿大学・医学部循環器内科学
pp.1351
発行日 2011年8月10日
Published Date 2011/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402105343
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評者が心臓電気生理学(EP)を志したのは1980年代後半,新しい概念や治療法の臨床応用が始まろうとする黎明期にあった.私と同世代のEPドクター(おそらく本書を翻訳した多くの先生方)にとって,若かりしフェローの時代は基礎的な(しかも当時はそれで十分な)知識を徹底的に学べばよかった.その後の20年,EPの目覚ましい発展がそのまま自身の知識と技術の進歩と連動しており,新たな展開をリアルタイムで実体験することができた.
一方,現代の若いフェローにとって「臨床心臓電気生理学」はそのいかつい名前と同様に,圧倒的な存在感を伴って彼らの前に立ちはだかる.心室頻拍(VT)患者を受け持ったフェローを例に取ってみよう.患者が何とか急性期の危機を乗り切っても彼(彼女)に休息の時間はない.VTの基礎知識と心電図所見を理解し,EP studyやアブレーションの適応判断とそのデータを解釈し,ICD植込みの検討を迫られる.矢継ぎ早の攻撃だ.どこから手を付ければよいのか,海図なしで大海に浮かんでいるような不安感.「誰か助けて!」
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