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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
エノラーゼは解糖系酵素で,α,β,γの3種類のサブユニットがあり,αα,ββ,γγ,αβ,αγの5つのアイソザイムがある.エノラーゼの中でγサブユニットを有するアイソザイムは,神経組織や神経内分泌細胞に特異的に存在するため,神経特異エノラーゼ(neuron-specific enolase:NSE)と呼ばれている.NSEは正常ヒト血清中にはごく微量しか存在しないが,神経内分泌腫瘍や神経芽細胞腫,褐色細胞腫,神経内分泌細胞由来とされる肺小細胞癌などでは,組織からNSEが逸脱することにより血中濃度が上昇するため,腫瘍マーカーとして利用されている.血清NSE上昇には腫瘍細胞の崩壊が必要であり,腫瘍細胞の増殖が盛んで,細胞のturn overが激しい場合あるいは化学療法,放射線療法などの治療により腫瘍細胞が破壊された場合に上昇する.
臨床上の重要性と選択
NSEは小細胞肺癌で60~80%と陽性率は高いが,非小細胞肺癌でも10%前後で陽性となる.
小児の神経芽細胞腫では80~90%で陽性となる.
甲状腺髄様癌,褐色細胞腫,膵ラ氏島腫瘍などの内分泌腺腫瘍でも10~50%の症例で陽性となる.
一般にNSEを含め腫瘍マーカーは補助診断に有用であるが,確定診断のためには気管支鏡などの病理組織学的検査などが必要である.
成人では,血清NSE高値の場合で胸部画像診断で異常がみられない場合には,甲状腺腫瘍の検索,腹部超音波やCTによる検索が必要である.
NSEの測定は,肺癌・神経系腫瘍の補助診断として,また治療効果判定・再発の予知などに有用である.
NSEを多量含有する腫瘍でも早期から上昇を示さず,早期診断には効果的でない.
診断時にNSE上昇例は進行癌である場合が多い.
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