増刊号 免疫検査実践マニュアル
各論
Ⅱ.腫瘍マーカー
3.NSE
須藤 英一
1
,
四元 秀毅
1
1東京大学医学部附属病院検査部
pp.158-159
発行日 1994年4月15日
Published Date 1994/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901923
- 有料閲覧
- 文献概要
■NSEの性状と組織内分布
エノラーゼは哺乳類の全身各組織に広く分布する解糖系酵素で,細胞内における嫌気的解糖の代謝経路の中で2-ホスホグリセリン酸と2-ホスホエノールピルビン酸の過程を触媒する.分子構造としては,分子量約50kdの3種類のサブユニット,α,β,γから成る二量体の酵素である.エノラーゼアイソザイムとしては,αα,ββ,γγのホモダイマー型とαβ,αγのハイブリッド型の計5種類が知られている.このうちγサブユニットを持つγγとαγのいわゆるγエノラーゼは神経細胞と軸索突起の神経組織にのみ存在し,他の組織では認められないとして,neuron specific enolase(NSE)と命名された1).
NSEは中枢神経組織に圧倒的高濃度で分布し,末梢神経組織にも若干量存在する.肺,心臓,筋肉,肝臓などの組織ではほとんど認められないが,神経内分泌細胞を含む下垂体前葉,甲状腺,膵臓,副腎髄質などの組織にも認められ1,2),さらに,脳下垂体前葉腺細胞,甲状腺傍小細胞,膵ランゲルハンス島細胞,副腎髄質クローム親和性細胞にも免疫組織化学的手法によってこれを見いだすことができる1).
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.