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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
グルコースと生体内蛋白であるヘモグロビンが非酵素的に結合したケトアミンがグリコヘモグロビンであるのに対し,グルコースとアルブミンが結合したものがグリコアルブミンである.本来,これらの糖化蛋白はその蛋白の存在する期間の平均血糖に依存して生成されるため,用いる蛋白の半減期の違いによって,異なった期間の平均血糖を推測する指標となる.アルブミンの血中半減期はヘモグロビン(約120日)より短く,約20日であることから,過去2~4週間の血糖の平均を反映し,HbA1cより短期の血糖コントロール指標として用いられている.また,アルブミンとグルコースの結合はヘモグロビンの約10倍であるため,グリコアルブミンは血糖の変化に際してはHbA1cより大きく変動する.HbA1cとのこの差を利用し,糖尿病の治療開始時や不安定型糖尿病などで早期に血糖コントロール状態の変化を把握したい場合はHbA1cよりグリコアルブミンがよく用いられる.また,HbA1cが偽高値または偽低値を示し,血糖コントロールの指標として不適切な場合も用いられる.
臨床上の重要性と選択
糖尿病治療の主たる目標は,慢性合併症の発症および進展を予防することであるが,DCCTやKumamoto Studyなど多くの調査はその血糖コントロール指標としてHbA1cを採用している.したがって,エビデンスに基づけば糖尿病ではHbA1cを測定したほうが望ましい.しかし,血糖が安定した条件下では,血糖値とグリコアルブミンの関係はHbA1cの場合と基本的に同じであり,グリコアルブミンはHbA1cの約3倍の値となるといわれており,グリコアルブミンを血糖コントロール指標として用いる場合はこのことを参考にする.また,図1のように糖尿病の治療開始後の経過をみるのにも,グリコアルブミンはHbA1cよりもより早期により大きな変動を示すため優れた指標となる.さらに,透析糖尿病患者における血糖管理についても,透析による赤血球破壊や赤血球寿命短縮などによりHbA1cは偽低値を示すことが多いため,透析患者ではグリコアルブミンのほうが有用である(図2)といわれている.このように,これらも含めて,表1に示すような病態の場合はHbA1cよりグリコアルブミンを測定したほうが有用である.
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