病理との付き合い方 明日から使える病理の基本【実践編】 8
骨髄
佐藤 孝
1
,
時田 智子
1
1岩手医科大学医学部第2病理
pp.1609-1613
発行日 2006年9月10日
Published Date 2006/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402101706
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骨髄は骨組織に囲まれた造血組織で,赤血球,白血球,巨核球の造血3系の細胞のほか,マクロファージ,細網細胞,脂肪細胞,血管などから構成されている.骨髄検査は,貧血や白血病などの血液疾患における骨髄造血能の評価のために重要な検査で,骨髄穿刺法と骨髄生検法の2つの方法がある1).骨髄穿刺法は,骨髄内に穿刺針を入れ骨髄液を吸引し塗抹標本を作製し観察するもので,造血細胞をはじめとした骨髄を構成する個々の細胞の詳細な構造を観察するのに役立つ.これに対し骨髄生検は,生検針を用いて骨髄組織を採取し他の生検組織と同様に標本を作製し観察するもので,骨髄全体の組織構築を評価するのに有用である.骨髄穿刺と生検はそれぞれの短所を相補し合うが,生検は穿刺に比べ患者への負担が大きく,手技的な点からも穿刺のほうが行われることが多い.穿刺により採取された骨髄液の中にも骨髄小片が含まれており,細胞数の算定や塗抹標本を作製した残りの骨髄液をホルマリン固定後パラフィン包埋し標本(クロット標本)を作製すれば,骨髄の組織構築の観察が可能となる.病理では塗抹標本を参考にしながら,このクロット標本の観察が中心となる.
すでに述べたように骨髄検査は重要な検査であるが,血液疾患の診断は他の検査所見も併せてなされることが多い.この点で,今まで取り上げられてきた他の臓器検索の組織診断が病理でなされるのとは違って,病理診断のもつ意義も他の臓器とは多少異なっている.本稿では骨髄穿刺法により作製された塗抹標本,クロット標本について述べる.この2種類の標本のもつ短所,長所を比較しながら,組織構築を中心とした骨髄組織病理の観点から解説を進めたい.
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