今月の主題 臨床行動に結びつく検査戦略
検査戦略の正しい理解
データ判読の基礎
北村 聖
1
1東京大学医学教育国際協力研究センター
pp.740-743
発行日 2004年5月10日
Published Date 2004/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402100785
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生体情報の特徴―ホメオスタシスとゆらぎ
臨床検査は,いろいろな計測技術を利用して,生体の変化を捉えることである.便宜的に,心電図など患者からの情報を直接計測する場合を生理機能検査と呼び,患者から採取した血液・体液や組織の一部について計測する場合を検体検査と呼んでいる.
生体変化はあいまいなもの
臨床検査の対象となる生体の変化はファジー(fuzzy:あいまい)なものであり,無生物を計測するのとは根本的に異なる.生体は常にゆらいでいるが,そのゆらぎは一定範囲内にあり恒常性(ホメオスタシス)を維持している.すなわち,身長を計測することに例えると,例えば乳児は背筋をちゃんと伸ばすことはないので,1mm単位まで測ることは困難で,あるがままの体勢で迅速に測らなければならない.また,髪の毛の多い人とない人では身長が違ってくる.日本髪のように非常に多い人ではどこまでが「真の体」なのか定かではないし,洗いざらしと結い上げた後では高さが変化している.また,一般に朝に比べ夕方では身長がやや短くなる.このように生体の測定は単に細部まで測定すればよいというのでなく,常に変化するものとして捉え,その変化の範囲が一定の範囲内であるかどうかを観察することが重要である.すなわち,臨床検査結果を判読する場合には,こうした検査数値をもう一度あいまいな変化のなかに戻して判断することが要求される(図1).単純な算術的現象ではないことをまず理解すべきで,それが十分にされていないために,臨床検査にさまざまな誤解や問題が発生している.
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