連載 公衆衛生のControversy
個人情報はどこまで守るべきか
個人情報の利用はその目的が妥当な限り許される/疫学の研究などにおける個人情報保護
中川 秀昭
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1金沢医科大学公衆衛生学教室
pp.66-67
発行日 2001年1月15日
Published Date 2001/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902440
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個人情報保護に関する重要性が高まる中,国立循環器病センターや東北大学,九州大学などわが国を代表する循環器の疫学研究で,健康診断で採血した血液を受診者の同意を得ないままに遺伝子多型の解析を実施し大きな問題となったことは記憶に新しい.その経緯について詳しいことを知り得ず新聞情報でしかないが,循環器病センターの場合は健康診断の通常の採血とは別に新たに採血を行ったことから,当初から遺伝子多型の解析を目的としていたと考えられ,倫理委員会の承認も得ていなかったとある.このことは一例であるが,わが国ではこれまで研究者の中で「個人情報」が必ずしも考慮されてはこなかったこと,また,多施設共同研究以外,単独の研究者や研究室で実施される研究には十分な研究計画書が作成されないことが多く,いろいろなことが曖昧にされていたことも事実である.
15年前のことになるが,塩と高血圧に関する国際共同研究(intersalt)に参加し,また5年前にも栄養と高血圧に関する4カ国共同研究(intermap)に参加し,健康診断や栄養調査などのようなわが国で一般に行われていることに対しても,地域代表者の研究機関の倫理委員会の承認を受け,被検者一人一人にインフォームド・コンセントを取ることを求められたとき,ここまでしなければならないかと驚かされたものである.二つの研究の計画書には研究の意義と目的,方法,資料の質,被検者の利益・不利益などが詳細に検討されており,個人情報の保護がどのようにされるのか記載がされていた.
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