連載 海外レポート ニューヨーク州保健省の日常・9
IRBによるヒト被験者の保護とインフォームドコンセント
ホスラー 晃子
1,2
Akiko S. Hosler
1,2
1ニューヨーク州保健省慢性病疫学課
2ニューヨーク州立大学公衆衛生大学院
pp.664-665
発行日 2000年9月15日
Published Date 2000/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902367
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前号では研究倫理の審査の歴史的な背景を紹介したが,今回はニューヨーク州保健省のIRE(Institutional Review Board)活動とインフォームドコンセントについて触れてみたい.IRBとは米国公衆衛生事業法の連邦規約第45条(俗称The Common Law)に従って,連邦政府の研究助成金の受け取り先である主な大学や病院などの研究機関が,科学研究の倫理の徹底と被験者保護のために,研究の審査,監視を行う内部機関のことである.IRB制度は,第二次大戦後,ナチス生体実験の悲劇を教訓とし,ニュルンベルグ規約やヘルシンキ宣言における被験者保護の理念を実現化するために作り出された.そして1972年にアメリカ史上最悪の研究倫理違反とされるタスキギー梅毒研究が暴露された後は,国家研究法(National Research Act)により,IRBの権限の強化が行われ,研究の審査,監視活動の法制化が確立された.現在アメリカにおけるIRBの中心となる理念は,ベルモントレポートと呼ばれる政府白書に掲げられた3原則に凝縮されている.それは,ヒトの尊重(インフォームドコンセント:研究の目的,方法,利害や権利が正しく被験者に説明されていることの確認),恩恵(被験者への危険回避の最優先),そして公正(被験者の選択の公平と差別の禁止)の三つである.
ニューヨーク州保健省は,内部に研究機関を有し,年間数千万ドルに及ぶ連邦政府からの各種助成金を受けているため,政府協定による公認のIRBを有している.
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