アニュアルレポート・2000
衛生学の動向
能川 浩二
1
1千葉大学医学部衛生学教室
pp.261-263
発行日 2000年4月15日
Published Date 2000/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902277
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日本衛生学会は,会員3,000人を擁し70年の歴史を誇る伝統ある学会である.主要な会員は大学関係者であるが,行政や民間の研究部門に所属する研究者も参加している.研究分野は,地域保健,職域保健,健康管理・増進・教育,環境,食品,衛生行政・統計,有害物質など広範囲にわたっており,社会医学的視点からの研究が進められている.現代は,疾病の予防,健康増進,環境汚染の防止とより良い環境を求める環境問題の解明についての社会的要求が極めて強く,衛生学を学ぶ者にとってやりがいのある時代となっている.しかし,そのような人材を養成し,また研究をする重要な場である医科系大学では,公衆衛生学と衛生学講座の統合が行われ,2講座から1講座への流れが見えつつある.遺伝学がすべての疾病の鍵であるという研究の流れのなかで,社会医学的発想を持つ学問は,大学内の評価(論文数とインパクトファクター)に適さずに,このままの状況では,専門分化のいっそうの進行の下で弱体化するおそれがある.衛生学会では,今後の衛生学の発展のための方策を検討している.衛生学雑誌での各研究者の意見の発表,衛生学公衆衛生学教育協議会の活動,学会の活性化のための学会賞の設定などの方策である.いずれにせよ,社会の必要性に応じた研究,教育を進展することが衛生学の発展につながるであろう.第69回を迎えた衛生学会総会の内容を要約して伝えることにより,衛生学の現在の状況と課題を展望したい.
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