視点
専門性と公衆衛生−21世紀に向けての地域保健
大井田 隆
1
1国立公衆衛生院公衆衛生行政学部
pp.218-219
発行日 2000年4月15日
Published Date 2000/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902267
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新聞の経済欄を見ると現在の景気を反映して,いかに日本経済を活性化させるかの記事が多い.そのひとつにベンチャー企業の育成に関心が注がれており,通産省もその支援に努めている.ベンチャー企業の反対の言葉を捜すならそれは総合商社ではないだろうか.最近,その総合商社の雲行きが怪しくなっている.「ラーメンからミサイルまで」の代名詞を持つ看板を下ろしはじめており,得意分野で効率経営をしなければ生きていけない時代になってきた.その一方で企業だけではなくサラリーマン個人にも「なんでも屋」からの脱皮を促しており,専門性・技術性のあるサラリーマンになって,リストラ時代を生き延びることを勧めている(読売新聞,1999年8月1日).しかし,このような記事がこの経済不調時に掲載されること自体,いかにわが国は専門性・技術性を評価してこなかったのかをよく表していると思われる.経済が好調時であるなら“Japan as No. 1”と言ってみたり,もう世界から学ぶものはなく,日本式のやり方が世界を制したと感じるのかもしれない.実際そうであった.
もともと,専門性を重視する考え方は18世紀に自由主義経済思想を完成させたアダム・スミスの国富論1)の中に見られる.彼は1人の人が作るピンの生産量は分業によってさらに増大することを証明し,「分業は,労働の生産量を増進させる最大の原因である」と述べ,産業革命を支える思想的背景となった古典的経済学の基礎を築いたのである.
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