特集 今,WHOの歩みから学ぶもの
アルマアタ宣言とプライマリヘルスケア
中村 安秀
1
1東京大学医学部国際地域保健学教室
pp.619-623
発行日 1997年9月15日
Published Date 1997/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901751
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アルマアタ宣言以前の開発途上国
世界各国で直面している保健医療問題の多くは,単に医療や保健の分野だけで解決することが困難であり,国際経済,政治,社会全体にわたるグローバルな矛盾と深くかかわっている.開発途上国においては,近代医療の直接的な導入により問題が解決しなかったばかりか,より矛盾が増大していった.また,先進諸国においては,高度医療の進歩により国民の心身の健康が増進したわけではなく,健康を脅かす種々の社会的状況はより深刻化してきた.このような厳しい状況に対処し,「2000年までにすべての人々に健康を!」(HFA 2000:Health for All by the Year 2000)という世界共通のゴールを目指すための戦略として取り上げられたのが,プライマリヘルスケア(PHC:Primary Health Care)である.
ここでは,まず,アルマアタ宣言に至るまでの主に開発途上国を中心とした保健医療の動きを簡単にスケッチしてみたい.
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