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水道水によるクリプトスポリジウムの集団感染—塩素耐性原虫にどう対応するか
井関 基弘
1
1大阪市立大学医学部医動物学
pp.573-577
発行日 1997年8月15日
Published Date 1997/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901742
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昨年6月,埼玉県越生(おごせ)町の町営水道がクリプトスポリジウムという原虫で汚染され,約1カ月間に町の人口の約70%という大規模な集団感染が発生した.英国や米国でも水道水による集団感染が1980年代の半ばから相次いで報告されている.とくに,1993年に米国のミルウォーキーで起こった事例では,下痢患者数は3週間で40万3千人,入院患者数は2,400人に達した.エイズ患者などの免疫不全患者も汚染されたため,1995年末までに約400人が死亡したという.
通常の浄水処理や下水処理過程で使用される塩素消毒ではクリプトスポリジウムのオーシストを殺滅することは全く不可能なので,浄水が何らかの原因で汚染されると短期間に大規模な集団感染が起こることになる.また,本症に有効な治療薬がまだ開発されていないので,健常人は自己の免疫力による自然治癒を待つしかないし,エイズ患者などが感染した場合は激しい水様下痢がいつまでも持続し,しばしば致命的になる.
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