連載 福祉部門で働く医師からの手紙
発達障害児にかかわる療育施設の医師から
本山 和徳
1
1長崎市障害福祉センター,小児科
pp.213-214
発行日 1997年3月15日
Published Date 1997/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901662
- 有料閲覧
- 文献概要
診察室の向こう側で
「たっちゃん,おしっこ,おしっこ」,「あー,こうちゃんが歩いた」,保育室ではこどもの声と保母の声が合わさって賑やかな朝が始まる.「先生,しーちゃんが元気がありません.ちょっと診て下さい」私の出番である.保育室で診察を始めるとほかの園児が心配そうに覗きこむ.言葉でのコミュニケーションはなされなくとも園児の間にいつの間にか仲間意識が育っていることに気づかされる.年齢にそった明らかな発達はみられなくとも心の成長に気づかされる時,あたりはやさしい雰囲気に包まれる.外には緑の山の斜面,連なる家並,上には白い雲を抱く青い空…いつもの風景がある.そして,いつも子どもの周りには発達の変化に心を寄せる親心がとりまいている.ここは精神薄弱児通園施設とよばれる発達の心配される児の日々の療育の場である.
当地に平成4年,4月,障害福祉センターがオープンした.精神薄弱児通園施設(第一さくらんぼ園)と心身障害児通園事業(第二さくらんぼ園)が同じ建物の中に創設された画期的な発達障害児の療育の場である.したがって保育を担当する保母,児童指導員とともに,運動訓練や,言語,感覚統合療法など発達障害に見合った訓練を行うために理学療法士,言語療法士,作業療法士,臨床心理士を置き,さらに診療所を併設し小児科医を常勤として配置したのである.
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.