連載 疫学の現状
糖尿病の疫学
赤澤 好温
1,2,3
1厚生省糖尿病予防・疫学研究班
2国立京都病院
3WHO糖尿病協力センター
pp.57-63
発行日 1996年1月15日
Published Date 1996/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901415
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緒言
1988年8月厚生省広報誌「厚生」は,糖尿病特集を組み,当時の厚生省大臣官房審議官寺松 尚博士は,その冒頭に次のように述べている1).
「糖尿病は予防できる疾患になったのだろうか.残念ながら,糖尿病の患者数は戦時中を除いてずっと増え続けてきている.……糖尿病の予防は未だスタートしたとは言えない.厚生行政にとっての今後の重要課題である.糖尿病は,死因の第11位(昭和61年)を占めている.しかし,糖尿病を間接死因としている人は糖尿病を直接死因とする人の2倍いる.…中途失明の原因としてもっとも多いのが糖尿病性網膜症である.失明を防ぐ努力と同時に,不幸にして視力障害を生じた人に対する対策も講じられなければならない.糖尿病性腎症により腎不全を引き起こして透析に移行している患者数が年間3000人にのぼっている.……糖尿病対策のために貴重な医療資源が消費されるとともに,患者が生産から遠ざかり,質の低い生活を送らねばならない現状は,国家的な損失である.今こそ,本格的な糖尿病対策が必要なときである.
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