特集 現代の予防接種—その意義と課題
中国の予防接種とポリオ対策
髙島 義裕
1
1大阪大学医学部公衆衛生学教室
pp.546-552
発行日 1995年8月15日
Published Date 1995/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901321
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
1974年に開始されたWHOのEPI(Expanded Programme on Immunization,予防接種拡大計画)における1歳以下の小児の予防接種率は当初途上国では5%程度であったが,1992年においては破傷風を除いて80%に達し,これにより同年,300万人の小児が麻疹,新生児破傷風,百日咳,ポリオによる死亡から免れた1).一方,世界銀行は世界開発報告1993において,保健分野への投資は人類の幸福にとって必須であるばかりではなく経済的な発展を促す上でも不可欠であると述べているが,そこではまた,健康分野におけるあらゆる介入行為のうち小児への予防接種事業は最も費用効率の優れたものの一つであることを指摘している2).EPIの成果を背景に,1988年,第41回世界保健総会は2000年までに地球上からポリオを根絶することを決議し,同じ年,WPRO(WHO西太平洋地域事務局)は1995年を目標に当該地域からのポリオの根絶を決定した.
中国はWPROの約15億の総人口のうちおよそ80%を擁する.当地域では1988年までポリオの発生数の順調な減少がみられたが(同年2,126例),89年には5,485例まで再度上昇した3).そのうち84%(4,268例)は中国からの報告であり,中国東部に位置する5つの省でのOutbreakが最大の原因であった.WPROにおけるポリオ根絶計画の成否は中国での根絶事業に大きく依存しているといえる.
Copyright © 1995, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.