連載 疾病対策の構造
ごみ問題は「衛生」から卒業したか
小林 康彦
1
1(財)日本環境衛生センター
pp.58-61
発行日 1995年1月15日
Published Date 1995/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901188
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1.ごみ問題をめぐっての議論
廃棄物問題は人類の発生以来の問題であり,それへの配慮が欠けていたため,例えば,平城京が定着できなかったとの説はあるものの,わが国では,総体として,それぞれの時代ごとに,なんとか対応してきたように見える.しかし,現在は,状況によっては都市の命運を握る最大の鍵と見なされるほど,廃棄物問題は重要性を増していると思われる.大量生産,大量消費,大量廃棄の行き着く空間を都市は確保できるであろうかという懸念である.例えば道路ではその整備計画が遅延しても,不便ではあってもなんとかやりくりがつく.しかし,廃棄物の受け入れ場所がなくなれば,その日から生活や社会は大混乱に陥ることは明らかである.廃棄物に長年たずさわってきた筆者は,廃棄物問題の解決策がわが国において未だ確立できていない危機感と,日本人の対応能力の優秀さとの間で,揺れている.
最近,「ごみはかつては衛生問題であったが,現在は資源問題である」といった主張が盛んである.また,「リサイクルを徹底して,ごみの発生を零にすることが最終的な目標である」という方も少なくない.ごみというものは,色々な顔をもっているから,光の当て方によってさまざまに解釈できる(図1).
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