調査報告
中国帰国者の児童とその家族の生活適応—睡眠習慣・交友状況・言語習得状況を中心に
栗栖 瑛子
1
,
斉藤 高雅
2,3
,
戴 小燕
2,3
,
橋本 明
4
,
佐々木 雄司
5
1埼玉県済生会鴻巣病院
2東京大学医学部健康科学・看護学科
3東京大学医学部精神衛生・看護学教室
4東京都立大学
5独協大学
pp.820-824
発行日 1994年11月15日
Published Date 1994/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901154
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●はじめに
日中両国の国交正常化(昭和47年9月29日)に伴い,中国残留日本人孤児とその家族の日本への帰国は昭和61年以降急増し,国費等による永住帰国孤児世帯数は(平成2年5月31日現在で)1,229世帯,4,977人,うち孤児は1,232人を数える1).日本人の血を引いてはいるが,中国残留孤児とその家族にとっての帰国は,中国文化から日本文化への複雑な適応を意味し,単なる移住ではなく移民の一亜型2)ととらえることができよう.
これまでの中国帰国者に関する報告は帰国成人を対象としたものであり2-5),その子どもを対象にした研究は極めて少なく6),また,研究の関心は,精神医学的な不適応問題の発生と移住との関連に向けられ,人々が文化に馴染んでゆくプロセスを日常生活のレベルから具体的に取り上げようとした報告は少ない.
近年,外国人労働者や難民を受け入れつつあるわが国の現状を踏まえると,地域の中で生活する外国人労働者に対する公衆衛生サービスおよび援助に,このような視点からの知見が多くの示唆を与えるものと考える.
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