特集 現在からみる公害
東京の大気汚染—東京スモッグから24年
朝来野 国彦
1
1前東京都環境科学研究所
pp.603-606
発行日 1994年9月15日
Published Date 1994/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901104
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◆はじめに
1970年7月15日,東京都杉並区の住宅街の一画にある女子高校の校庭で,ソフトボール部の選手数名が,呼吸困難を訴えて倒れたいわゆる「東京立正高校事件」から24年になる.この年の5月には新宿区の牛込柳町交差点周辺で,ガソリン自動車からの排気ガスに含まれる鉛汚染が問題となった.この二つの社会問題化した大気汚染は,いずれも自動車から排出される成分と関係が深く,汚染の主役が製鉄所や火力発電所などの産業型から,自動車排出ガスを中心とした都市型へ変貌する先駆けであった.
平成4年度の測定結果では,大型ディーゼル車が主な発生源である二酸化窒素,浮遊粒子状物質が多くの地点で環境基準を越えており,かつて大気汚染の主役であった,製鉄所や発電所から排出される硫黄酸化物は,すべての地点で環境基準を満足している.桜島なみの硫黄酸化物汚染に見舞われていた東京の大気汚染を考えると,感慨深いものがある.
本稿は,産業型公害から都市型公害へ変貌していった東京都の大気汚染の推移と現状,残されている課題について,現場の視点からまとめたものである.
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