トピックス
精神保健法の「見直し」—さらに5年後を見越して
吉川 武彦
1
Takehiko KIKKAWA
1
1国立精神・神経センター精神保健研究所
pp.701-704
発行日 1992年10月15日
Published Date 1992/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900667
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●はじめに
旧精神衛生法の改正に当たって筆者が強調してきたことは3点である.
その1は,国民が自らの精神健康の重要性に気づき,さらに精神障害と精神障害者に関する理解を深めることなくしては精神保健状況は変わらないという点であった.いいかえれば,精神保健は精神障害者の治療やリハビリテーションが円滑に進めばすむという類のものではないということである.精神障害者の社会復帰・社会参加も国民の精神保健意識に変化が起こらない限り進まない.
その2は,検討に当たっては歴史的視点をもつということであった.この点については,これまでのわが国の精神保健関連法規である精神病者監護法(1900),精神病院法(1919),精神衛生法(1950)および1965年に大改正された精神衛生法において,精神障害者の処遇が人権擁護と社会復帰・社会参加からどのような変遷を遂げたかを検討してきた.
その3は,現状認識を十分に行うということであった.インフラストラクチュアが十分でないところに理念を走らせても,法はまったく機能しないといっていい.
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