公衆衛生人国記
東京都—公衆衛生のお雇い外国人バートン
酒井 シヅ
1
Shizu SAKAI
1
1順天堂大学医学部医史学
pp.502-504
発行日 1992年7月15日
Published Date 1992/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900614
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
ここに1冊のアルバムがある.駿河台のニコライ堂の鐘塔の上から360度カメラを回して,東京市を13枚に分けて写したものである.時は明治21年(1888)の暮れに近い冬のある日であった.建築中であったニコライ堂の足場から撮ったものである.高くて大きな建物といえばお寺しかなかった時代にニコライ堂の鐘塔はけた外れに高かった.ぐるりと見回したパノラマ写真は壮観である.この写真を撮ったのがWilliam KinnimondBurton(1856-99)であったといわれる.
バートンは日本に衛生工学という学問をもたらした英国人であり,東京をはじめ日本の主要都市の上下水道の調査ならびに設計を指導した人物である.1856年5月11日にエディンバラに生まれた.父は歴史学者で,スコットランド史で有名な人である.エディンバラ工業専門学校を卒業(一説にケンブリッジ大学のキングスカレッジを出たとある).1873年から5年間,エディンバラ市内のブラウン社に勤務,その後,母方の叔父と一緒にロンドンに衛生工事の事務所を開き,1882年から叔父が代表になった衛生保健委員会の専任技師を勤め,市民工学研究所の協力会員でもあったときに,東京行きの誘いを受けたのであった.
Copyright © 1992, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.