エスキュレピウスの杖
(3)WHOのマニュアルとフレックスタイム
麦谷 眞里
1
Masato MUGITANI
1
1WHO本部
pp.422-423
発行日 1990年6月15日
Published Date 1990/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900121
- 有料閲覧
- 文献概要
1.マニュアル
私は,今この原稿を,コペンハーゲン発バンコック行きのスカンジナビア航空SK 975便の中で書いている.朝早く,バンコックに到着し,そこでタイ航空に乗り換えてマニラに向かうためである.時計はすでにバンコック時間に合わせてあるので午前2時45分を指しているが,ジュネーヴ時間では,まだ午後の8時45分である.当然のことながら眠くない.以前は,時差の克服方法などをいろいろ考えて試していたが,最近は眠いときには眠り,眠くないときには何か作業をすることに決めている.要するに,時差対策を講じていないのである.ここ2〜3年の間,大体年平均8回ぐらいの海外出張に従事してきたが,その乏しい経験からして,生物時計はそう簡単には騙せない,という事実に気付いたのである.薬などを使って強制的に調整が効くのは睡眠だけであって,身体全体の周期を変えることは容易ではない.なるほど,人間の身体はうまくできているものである.したがって,だらしない話ではあるが,飛行機の中ではまったく流れに任せてしまっている.
さて,出張手続きというのは,どこの組織でも大体同じようで,最初に出張場所と理由を非公式に上司に相談し,次いで日程を調整したあと公式文書にして決裁をとる.
Copyright © 1990, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.