特集 痴呆性老人の地域ケア
高齢者の精神保健—21世紀に向けての“老人性痴呆疾患”対策
篠崎 英夫
1
,
曽根 啓一
1
,
近藤 俊之
1
SHINOZAKI・Hideo
1
,
SONE・Keiichi
1
,
KONDO・Toshiyuki
1
1厚生省精神保健課
pp.364-369
発行日 1990年6月15日
Published Date 1990/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900106
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■はじめに
人生80年を超える時代に入ろうとしている.急速に進む高齢化社会の到来を眼前にひかえ,その対策は急務である.高齢化するにつれ種々の疾病が出現してくるものであるが,中でも痴呆はやっかいである.痴呆は「知・情・意を含む全人格の解体」といわれており,解体過程において多少とも精神症状や問題行動を呈するからである.痴呆老人は家庭の中で,あるいは,彼らが生まれ育った社会の中で,周囲の者が困惑したり迷惑を感じながらも,なんとか支えられていた.周囲の者が困惑したり迷惑に感じたり疲れきったりするのは,昔も今も変わっているとは思われない.しかしながら,この間の社会構造の変化,家族構成の変化,人口構造の変化,価値観の多様化等が急速に進んだことから,老人問題,殊に痴呆を呈する老人問題がクローズアップしてきたと考えられ,今日,医療・福祉の連携のもとでの対応が強く迫られつつある.従前から,個々の痴呆疾患については神経病理学的アプローチにより神経科および神経精神科が主としてかかわってきた経緯があるが,高齢者にみられる今日的課題に取り組んでいたとは必ずしもいえない.
昭和52年10月には老人保健医療問題懇談会が開かれ,今後の老人保健医療対策のあり方について「さらに専門的検討を行うべき」と意見具申された.
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