発言あり
花と緑—菊と皐月,他
田島 達郎
1,2
1(財)岩手県予防医学協会
2岩手県民保健センター
pp.289-291
発行日 1990年5月15日
Published Date 1990/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900084
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約25年ほど前の話である.当時,病院の小さい公舎に住んでいた.玄関の前に一坪くらいの,それこそ猫の額ほどの空地があった.家内の伯父から結婚祝いということでバラの苗木が送られてきたので,そこに数本植えた.よくできたもので,本にある通りにやったら,活着し,翌年花を付けた.素人の浅はかさ,立派に咲いたと思ってバラ展に赴き,入会手続きを済ませ,切り花一輪を出品した.驚いたことに,それが新人賞に入賞したという知らせを受けた.恐らくその年の入会者すなわち新人は,私のみであったのであろう.
留守の時,会の人が賞状を拙宅に届けにきた.受け取った家内にどこにバラを植えているのですかと尋ねた.そこですと猫の額を指差したら,憐れむような眼差しで溜め息を吐いて退散したという.それを聞いて私の若い血が騒ぎ出した.猫の額でどこが悪い,日当たりのよい肥沃な広い庭があれば,より立派なバラは馬鹿でもできる,ヤーメタとバラ会を脱会したのは当然である.
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