保健行政スコープ
寝たきり老人ゼロ作戦
遠藤 明
1
1厚生省大臣官房老人保健福祉部老人保健課
pp.214-215
発行日 1990年3月15日
Published Date 1990/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900063
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1.背景
平成元年度の厚生省の重点事業の一つが「寝たきり老人ゼロ作戦」である.これまで,脳卒中対策など,寝たきりの原因となる疾患の予防対策に力を注ぎ,また寝たきりになってしまった人に対するホームヘルパーの派遣や日常生活用具の支給などを行ってきたが,寝たきりの状態そのものに関してはほとんど手が打たれて来なかったといっても言い過ぎではないだろう.しかるに,ジャーナリズムにも取り上げられ,昭和63年度の厚生科学研究「寝たきり老人の現状分析並びに諸外国との比較に関する研究」においても明らかにされているように,欧米では寝たきりでいる人が非常に少ないことが分かってきて,わが国が寝たきり老人60万人といっていることに対する反省が生まれた.
加齢に伴って多くなる状態,たとえば白内障や老人性難聴,変形性関節炎などが,年だからしかたがない,とあきらめをもって放置されてきたのはそう過去のことではない.今,白内障の手術は普及し,補聴器にはまだ改善の余地はあるものの,人工関節によって痛みなく歩くことができるようになっている.それと同様に寝たきりも高齢者にはやむを得ない状態では決してないということに気づいたことが,寝たきりゼロ作戦のきっかけとなっている.
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