予防と臨床のはざまで
コロナ鬱からウクライナ鬱へ
福田 洋
1
1順天堂大学大学院医学研究科先端予防医学・健康情報学講座
pp.652
発行日 2022年7月15日
Published Date 2022/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209880
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思えばこの2年以上、新型コロナウイルスの情報に触れなかった日はなく、企業での講演や衛生委員会等でも関連の情報発信をしなかったときはありませんでした。産業医面談でも、自粛や在宅勤務によりコミュニケーションが減少しふさぎ込みがちになった、いわゆるコロナ鬱といわれるような従業員の方のお話を聞く機会もありました。国民の関心も高く、1億総コロナ専門家といってもいいような状況で、ヘルスリテラシーの観点からは正しい健康情報の取捨選択を学べる機会ともいえる状態でした。ところが、今年の2月末のロシアによるウクライナ侵攻で、状況は変わりました。多数のヘリコプターが飛んでいく映像やブチャなどの街でのロシア軍の残虐行為のニュース等で、気分が悪くなったり落ち込んだりするといった、いわばウクライナ鬱ともいえる状態の方と面談でお会いすることになりました。
21世紀とは思えない、国家が他の主権国家を侵略するという暴挙に、言葉を失うような報道が連日続いています。すでに侵攻から3カ月が経過し、現在報道されている戦況として首都キーウや第2の都市ハルキウ近郊ではロシア軍が撤退している代わりに、東部ドンバス地区や南部の都市マリウポリは陥落の危機にあり、激戦が継続しているとのこと。私自身も毎日ネットで国際関連のニュースを見て、「ウクライナ情勢」と検索することが日課になっています。ご家庭では、食事時に父親がテレビでウクライナのニュースばかりを見る姿に、妻や家族がブーイングするという状況もあるようです。
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