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私が主催に関わっている3つの研究会(さんぽ会,文天ゼミ,臨床疫学ゼミ)のうち,臨床疫学ゼミについてはこの連載でも多く取り上げてきました.メインで書いたことも,第72回,第124回,第169回と3回あります.元々は,2007年から3度参加したミシガン大学公衆衛生大学院疫学セミナーにヒントを得て,2008年7月から開講しました.開講したばかりの第72回の連載では,「多くの疫学統計の勉強会に参加してきたが,研究者のためのものが多く,来週に迫る学会発表を抱えた臨床医や,明日の衛生委員会の直前で悩んでいる保健師の現場の切実な悩みには答えてくれない」と,当時のゼミ立ち上げの心境を吐露しています.この頃は総合診療科の会議室を用いたゼミで,参加者は毎月15名ほどでした.
第124回の連載でも「80点の人が100点を目指すゼミではなく,40点の人が80点を目指すゼミ」と雰囲気を記述しています.さらにこの年(2014年)から始まった新プログラム「プラクティカル疫学・統計学」について解説しています.ゼミでレクチャーを繰り返してきて気付いたのは「ずっと参加していても,なかなか研究が進まない」という現実.そのために「現場のこれがやりたい」から初めて,そのための知識が教科書の目次のどこに相当するか,つまり逆引きの発想でゼミを進めることを思いつきました.具体的には先輩役のチューターが事前に一緒に準備を行い,その勉強の過程を全て発表でオープンにします.その初回となった第62回臨床疫学ゼミ(2014年6月)では,保健指導に奮闘する管理栄養士の方に登場していただき,「ウィルコクソンって何ですか? 保健指導の効果を知りたい私の疑問」と題し,研究者と現場スタッフの一問一答を寸劇で再現しました.「検定の種類」より研究デザインや指標,何より「保健指導を評価したいこと」がはるかに重要と説明し,極論ですが「別に間違ってt検定してもよいではないか」という話から,変数の種類,正規分布,p値の意味などにも触れています.この頃には,場所を広い教室に移動し,参加者は現在の60名規模に増えています.
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