映画の時間
—彼女の心はなぜ壊れてしまったのか.共感と絶望から希望が生まれた———ベストセラー小説,待望の映画化—82年生まれ,キム・ジヨン
桜山 豊夫
pp.761
発行日 2020年11月15日
Published Date 2020/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209512
- 有料閲覧
- 文献概要
マンションの一室でしょうか,家事と子育てに追われる主婦がベランダから夕日を眺めてもの思いにふけっているようです.幼い娘の声にふとわれに返る主婦が,本作品の主人公キム・ジヨン(チョン・ユミ)です.舞台は変わって精神科の診察室で,男性が妻のことで相談に来ています.「ご本人が来なければ」という医師に家族の写真を見せる優しそうな男性が,主人公ジヨンの夫デヒョン(コン・ユ)です.細かな説明がなくても,この2つの場面で,一見平凡な家族が何か問題を抱えていることを想起させる鮮やかな導入だと思います.
ジヨンは,お正月に夫の実家へ戻った際に,突然ジヨンの母が憑依したような状態になります.しかしジヨンはそのことを覚えていません.以前にも同様の症状が出現したこともあるのでしょう.夫のデヒョンは妻のジヨンを心配して精神科を訪れたのですが,憑依した状態になることを自覚していないジヨンを傷つけることを恐れて,真実を伝えることはできません.
Copyright © 2020, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.