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「公衆衛生」誌の予防接種やワクチンの特集企画では,最近の新しいワクチンの紹介や接種スケジュールの解説などに焦点を当てたものが多かったと思いますが,本号では「予防接種政策」をテーマとしました.米国のACIPに相当する機関がなかったことや,重大な副反応事例を繰り返し経験したことなどを背景にして,わが国の予防接種政策が保守的・消極的になっていることは以前から指摘されていました.本特集の中にも,わが国の予防接種政策に感染症やワクチンなどの専門家よりも行政や法曹界の意見が強く反映される傾向があったことを示唆する解説がありました.ワクチンギャップの多くが解消され,また,副反応(疑いを含む)のモニタリングと迅速な公表制度が開始され,VPDのサーベイランス体制も充実してきたことなどを踏まえると,わが国の予防接種政策は着実に改善していると思います.しかし,厚生労働省の審議会に予防接種・ワクチン分科会が設置された後も,予防接種の専門家の意見は十分に反映されていないという意見もあり,政策形成プロセスには,さらなる改善が求められているようです.
本号の制作作業が進められている時期に,山形県は,インドネシア旅行からの帰国者を発端とした麻疹のアウトブレイク対策に追われていました.国内では麻疹排除レベルに達していても,輸入例が多いことを踏まえた啓発や早期診断体制の確保が重要であることを再認識しました.麻疹排除レベルの状態が続くと,社会全体として麻疹の免疫力を保持するための“復習”が困難となり,麻疹ワクチン接種歴が1回のみでは免疫の不十分な人が多くなるため,ワクチン2回接種の徹底や医療従事者の感染防止対策(抗体検査,ワクチン接種)などの重要性を実感した次第です.
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