映画の時間
—その引き金を引いた者は,英雄なのか,テロリストなのか.—サラエヴォの銃声
桜山 豊夫
pp.355
発行日 2017年4月15日
Published Date 2017/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208654
- 有料閲覧
- 文献概要
今年は第一次世界大戦の開戦から満103年を迎えます.開戦にはさまざまな要因が絡んでいますが,直接のきっかけとなったのは,1914年6月28日にサラエヴォでオーストリア皇太子夫妻がセルビア人の青年によって暗殺された,いわゆる“サラエヴォ事件”でした.今月ご紹介する「サラエヴォの銃声」はこの“サラエヴォ事件”に想を得たアンリ・レヴィの戯曲「ホテル・ヨーロッパ」を原案にしています.と言っても,サラエヴォの皇太子夫妻暗殺事件を直接描いているわけではありません.事件から100周年を迎えたサラエヴォのホテル・ヨーロッパで記念式典に関わる人たちを描いた群像劇です.ホテルを舞台にした群像劇というと映画「グランドホテル」が有名ですが,本作品はいわゆるグランドホテル形式というよりも,サラエヴォ事件を主題に,多くの登場人物がその主題に絡みながら,同時並行的に展開していく点で,G.W.グリフィス監督作品の映画「イントレランス」に似ています.
映画は記念式典の会場であるホテル・ヨーロッパの屋上で,サラエヴォ事件100周年記念のTV番組のインタビュー場面から始まります.そのホテル・ヨーロッパには記念式典に出席するためにヨーロッパ各地からVIPが集まってきます.しかし,ホテルは経営難から給料遅配となっており,従業員はヨーロッパ中が注目するVIPの集まる記念式典にあわせてストライキを計画しています.
Copyright © 2017, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.