特集 精神保健医療福祉の改革
アウトリーチ支援の実践による精神保健医療福祉改革
野口 正行
1
1メンタルセンター岡山(岡山県精神保健福祉センター)
pp.819-824
発行日 2016年11月15日
Published Date 2016/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208544
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2004年に「入院医療中心から地域生活中心へ」という謳い文句で「精神保健医療福祉の改革ビジョン」1)が打ち出されてから,本年で12年になる.この間の歩みはそれほど速いものとは言えないにしても,少しずつ入院医療から地域支援に向けてシフトしてきたのは事実である.厚生労働省の「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策の今後の方向性」2)においては,病床の削減と人材や財源の地域支援への集約や移転が強調され,そこでアウトリーチの重要性が明記された.このようにアウトリーチ支援はこれからの地域支援において重要な役割を担うことが強く認識されるようになってきている.また本稿執筆現在でも,厚生労働省の「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」においてアウトリーチという用語は頻繁に出てくる3).精神保健医療福祉においてアウトリーチはすでに一定の市民権を得たといえる.
このようにその重要性が認識されてきたアウトリーチ支援であるが,精神保健医療福祉が「入院」から「地域」へとさらにその歩を進めるためには,どのような形をとればよいのだろうか.本稿ではアウトリーチに関する海外の文献をいくつか参照し,わが国におけるアウトリーチ支援の議論を整理するとともに,今後の方向性についていくつか示唆したい.なお,本稿では紙数の関係上,アウトリーチ支援の質的な面,つまり地域支援に必要なリカバリーなどの理念をどう根付かせるかという重要な点には触れられないことをここでお断りしておく.
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