映画の時間
—季節は巡りゆく.想い出だけを残して—.—愛しき人生のつくりかた
桜山 豊夫
pp.147
発行日 2016年2月15日
Published Date 2016/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208370
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「めでたし,聖寵充ち満てるマリア,主,御身とともにまします…」といきなり,天使祝詞から映画ははじまります.カトリック教徒ならずとも,何ごとかと居住まいを正してしまうような場面ですが,実は告別式の場面です.主人公マドレーヌ(アニー・コルディ)の夫の葬儀で,つつがなく式も終わり,参列者が散会しはじめたところに,一人の青年がモンマルトルの墓地を慌ただしく駆け抜けて飛び込んで来ます.「墓地を間違えた」と大遅刻をしたのは孫のロマン(マチュー・スピノジ).父親のミシェル(ミシェル・ブラン)はしかめ面ですが,妻のナタリー(シャンタル・ロビー)と祖母のマドレーヌが優しくとりなします.
美しいモンマルトルの風景を背景に,冒頭から観客の心をつかみながら,登場人物の性格までも感じさせる,すばらしい演出です.監督のジャン=ポール・ルーヴは,俳優としても有名ですが,長編映画の演出は3作目とのこと,監督としての才能も素晴らしいものがあります.
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