特集 自治体行政と公衆衛生
扉
pp.5
発行日 2016年1月15日
Published Date 2016/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208335
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近代の公衆衛生は世界に先駆けて産業社会を形成したイギリスの都市の中で誕生したとされています.都市の不衛生な環境対策,傷病者への保護と支援を行うためには自治体の存在が必要とされました.自治体が母胎となり公衆衛生は制度として形づくられてきました.戦後,イギリスの公衆衛生の本体は自治体からNHSに移されました.しかし,2013年より健康づくりの主体は再び自治体とされ,Director of Public Healthが置かれています.
わが国でも明治期に自治体の公衆衛生が目指された時期もありました.その後,保健所体制が形づくられ,戦後も保健所を骨格とした公衆衛生体制が維持されてきました.1978年頃から,市町村を主体とした保健体制に移行しています.市町村は,平成の大合併,指定都市や中核市の要件の緩和などの激変の中にあります.その結果,保健所は都道府県と市の保健所が混在するようになっています.近年,自治体行政と公衆衛生組織の一体化が進められてきています.イギリスでは公衆衛生は誕生してから中央政府との関係,自治体との関係について試行錯誤を繰り返しています.イギリスと日本の公衆衛生は,歴史も形も異なっています.都市と農村の公衆衛生の違いもあります.現在は自治体を基盤としている点は共通しています.
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