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昨今,人やものの往来がますます活発になるとともに,国境を越えて短期間に感染症が広がるリスクも高まっている.2014年8月には,およそ70年ぶりとなるデング熱の国内感染事例が都内の公園において確認された.また西アフリカで流行が拡大していたエボラ出血熱やMERS,H7N9鳥インフルエンザなど,わが国がこれまで経験したことのない感染症の日本国内への侵入が懸念されており,住民の健康と安全に対する脅威に備えた対策が求められている.
感染症は,いつ,どこで発生するのかを予測することは困難であり,健康危機管理の強化を進めるうえでは,保健所,医療機関をはじめ関係機関において,日頃から感染症に対する情報の把握が必要と考えられる.現在,国においては感染症サーベイランスシステム(NESID)により,地方自治体とのネットワークが作られており,「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)に基づいて届出等が行われたデータの集計,公開が行われている.都においても同様に,都内の感染症の報告数や病原体情報,感染症トピックス等について,ホームページ上で公開し,感染症の流行状況や予防策等について周知を図っている1).都内には31カ所の保健所があり,各々の保健所では,集団感染や原因不明の感染症の発生等を含め,様々な感染症発生の連絡や報告を受けており,適宜適切な初動対応に努めている.各保健所が管内において感染症の対応を進める際,当該事例が地域で限局して発生しているものか,広域にわたる事例の一部であるか等,調査の中で総合的な判断が必要になる際には,公開されている感染症情報に基づいた流行状況の確認に加えて,都内の感染症の発生状況をモニタリングしている都庁感染症対策課,東京都健康安全研究センター(地方衛生研究所)疫学情報室等,感染症に係る関係機関の間で,地域の感染症情報を素早く共有し,感染症拡大防止に必要な迅速な対応や連携を図ることが重要である.
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