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日本人女性の平均寿命は戦後急速に延伸し,現在,世界最上位に位置している.実際,2013年の日本人女性の平均寿命は過去最高の86.61歳となっているが,このような喜ばしい状況にある一方で,日本人女性は,いくつもの健康課題に直面していることが明らかとなってきている.日本学術会議の報告では,性差を考慮した医療(Gender-specific MedicineあるいはGender-sensitive Medicine)を「婦人科学,泌尿器科学などの領域以外の一般的な疾患において,男女比が一方の性に傾いている疾患・病態,男女間で臨床像に差を見る疾患・病態,生理的・生物学的解明が男性または女性で遅れている病態,社会的な男女の地位と健康の関連などに関する研究」と紹介されている1)が,日本人女性の一生を見ると,ライフステージごとに女性特有の医学的課題および社会的課題がそれぞれ存在していることがわかる(表1).
医学的課題としては,思春期には第二次性徴発現に起因するこころとからだの変調とその重症化(摂食障害,月経痛など)や性感染症,妊娠・出産期には出産に関係するこころとからだの変調とその重症化(不妊症,妊娠糖尿病,産後うつなど)や子宮頸がん,更年期には更年期障害や乳がん,高齢期の課題では運動器疾患や認知症が挙げられる.これらは,女性ホルモンの変化や女性生殖器,そして長寿に関わる課題と理解できる.健康日本21(第二次)では,健康寿命の延伸を最終的な目標の一つとして設定しているが,健康寿命と平均寿命の差,すなわち,「日常生活に制限のある期間」は,2013年には男性で9.02年である一方で,女性では12.40年であり,女性のほうが何らかの制限をもって生きている期間が長いことが示されている.特に介護の原因となる疾病を見ると,骨折・転倒や関節疾患,高齢による衰弱といった運動器疾患に関する疾病の割合が,男性と比べて,女性では2倍以上多いことがわかる(図1).また,患者調査の結果を見ると,女性ホルモンや女性生殖器に関連する疾病の波が,年齢の上昇とともに,立て続けに女性に襲いかかっていることが理解できる(図2).
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