報告
ツツガムシ病急増要因の社会・疫学的考察
高田 伸弘
1
,
藤田 博己
2
,
多田 高
2
,
田中 博義
3
Nobuhiro TAKADA
1
,
Hiromi FUJITA
2
1福井医科大学免疫・寄生虫学教室
2福島県大原綜合病院付属大原研究所
3福井県衛生研究所
pp.555-559
発行日 1988年8月15日
Published Date 1988/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207755
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◆はじめに
最近数年間のわが国におけるツツガムシ病発生数は,厚生省集計の届出数に非公式例を加算すれば,年間およそ700〜1,000例にのぼるようになった.これは1975年以前の年平均10例弱と比べると,数字の上では10年間に100倍の急増ということで,やや不適当な用語ながら"流行"あるいは"再燃"といった認識が高まるにつれ,調査や検査体制の整備に新たに参画する大学や自治体の研究機関が増えたことは高く評価されるべきと思う1).しかしながら,本病の研究者数が20名に満たなかった1970年ころに,筆者ら2)は青森県で数例を見いだして注意を喚起しており,当時から多くの研究者が各地に配置されていたならば,さらに多くの症例報告があったに違いないと思われる.また,筆者ら3)を含めて近年の各地の調査4)において媒介ツツガムシ,病原リケッチアおよび自然宿主たる野鼠の全国的な分布が示されているが,このような知見は1950〜60年代までにすでに明らかにされていることで5,6),決して基本的な媒介サイクルの面積が最近になって100倍したものとはいえない.
そこで,改めて本病発生相の特質をみると,本病を古典型と新型とに分ける考え方は,この分野の研究と理解を深めるのに役立ってきたものの,今日の疫学知見では別な表現が要求されよう.
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