今月の表紙 帰ってきた寄生虫シリーズ・22
ツツガムシ
藤田 紘一郎
1
1東京医科歯科大学大学院国際環境寄生虫病学
pp.1044-1045
発行日 2001年10月15日
Published Date 2001/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904875
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ツツガムシはダニ目ツツガムシ科に属し,日本では約110種が知られている.ツツガムシの生活史は卵,幼虫,若虫,成虫の4期からなり,若虫と成虫は土中で補食性の自由生活を過ごしている.幼虫(体長0.3~0.5mm)は寄生性で,野ネズミ類を宿主としてその組織液を吸う.通常は野ネズミとツツガムシとの間でサイクルが回っている.今,地球の温暖化に伴ってつつが虫病が増加している(図1).病原体はリケッチャ(orientiatsutsugamushi)である.リケッチャ媒介はツツガムシのある集団が体内にリケッチャを共有しており,成虫→卵→幼虫→若虫→成虫と,野ネズミに関係なく経期・経卵感染によって垂直継代されている(有毒家系のツツガムシ).野ネズミやヒトには,幼虫が組織液を吸うときに唾液とともにリケッチャが注入されて感染する.リケッチャのタイプにはKato型,Karp型,Gilliam型,Kawasaki型,Kuroki型などがあり,ツツガムシの種によって保有するリケッチャのタイプが異なっている.アカツツガムシによる媒介リケッチャはKato型である.
多くの場合,刺咬後1~2週間くらいで突然発症し,頭痛,発熱,関節痛があり,所属リンパ節が腫脹する.やがて,躯幹や四肢に米粒大の紅い発疹が現れる(図2).中心の刺咬部(刺し口)は紅色丘疹から潰瘍となり,特有の痂皮となる.テトラサイクリン系抗菌剤が有効である.
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