特集 健康科学
乳幼児期の健康科学—子供のための新しい健康科学を求めて
織田 正昭
1
,
日暮 眞
1
Masaaki ODA
1
,
Makoto HIGURASHI
1
1山梨医科大学保健学第2教室
pp.38-42
発行日 1987年1月15日
Published Date 1987/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207404
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■はじめに
近年,わが国は平均寿命が延び,男74.84年,女80.46年(共に昭和60年)と,事実上世界最長寿国の地位を得るに至った.この平均寿命の延びに寄与した因子はいろいろあろうが,"乳児死亡率の低下"が多大な貢献をしたことは否定できない.統計的にみても,昭和初期の乳児死亡率は出生1,000人当たり100以上であった(昭和1年137.5;10年106.7)が,昭和51年にはついに10を割り,現在では6をも割るに至った.この"乳児死亡率の低下"の原因としては,結核対策の成功,出生前診断にもとづく早期治療の開始,ワクチンや抗生剤による感染症の予防・治療法の普及,医療制度の改善,出生率の低下などが挙げられる.健康な子供はやがて健康な社会をつくり,社会的繁栄の礎となる.このように乳幼児期の健康状態は,そのまま一国の将来全体をも予測する重要な要素となる.
ところで乳幼児の健康の保持・増進は,単に病気の克服という立場からだけでなく,健康にかかわる諸々の要素,およびそれらの因果関係をも考慮して,総合的にかつ積極的に求められなければならない.したがって例えば乳幼児の健康を扱う際,母親との関連を無視することは出来ないし,乳幼児の事故対策を乳幼児の立場だけからたてても決して有効ではない.
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