特集 国際保健医療協力
地域保健対策における国際協力
橋本 道夫
1,2
Michio HASHIMOTO
1,2
1前筑波大学社会医学系
2現北スマトラ地域保健対策
pp.383-386
発行日 1986年6月15日
Published Date 1986/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207277
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■はじめに
戦後の復興期における保健所医師としての地域保健活動は,筆者にとっての原体験ともいうべきものであった.急性伝染病の流行と防疫対策,これに伴う環境衛生活動,高い乳児死亡率を改善するための村々における母子衛生活動,結核患者の早期発見と予防のための集団検診及びそれにつぐ患者管理活動等は,30余年の遠い昔の活動であるが,これらの問題は世界の人口の3/4を占める発展途上国にとっては技術,社会,文化等の違いはあるものの現在の問題である.
昭和29年から1年間ハーバード大学公衆衛生学部でうけた修士課題の教育の中で,人間生態学コースにおける文化人類学者の各国における事例研究や,国際保健コースにおけるパキスタンの農村発展事業などの単位を修得したことは,筆者にとって将来発展途上国に対する国際協力に必ず参加してみようという夢を与えてくれた.奇しくもハーバードにおける農村発展事業のケースとして取り上げた同じ場所に,昭和33年に国連の地域開発セミナーで1ヵ月を過ごし,更にロックフェラー財団に招かれてプエルト・リコの地域開発における保健・医療・福祉の統合計画を学んで更に蓄積を増すことが出来た.厚生省の保健所課ではWHOのフェローの受け入れを担当させられたこともまた役立っている.その後,公害行政に従事して以来WHOの専門委員会に4〜5回出席して,環境汚染をめぐる先進国と発展途上国の対応の違いを知ることが出来たのも貴重な経験である.
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