特集 住宅と健康
高齢化社会における住宅のあり方—老人の住宅の条件
林 玉子
1
Tamako HAYASHI
1
1東京都老人総合研究所
pp.86-100
発行日 1984年2月15日
Published Date 1984/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206817
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■居住環境の捉え方
人間は加齢とともに老化して,老人と言われるようになる.その老人の意味を生理学・心理学・社会学分野では,表1に示すように規定している.いいかえれば,老年期はまさに,人生において獲得したものを失う,または衰退していく時期でもある.それ故に,失われたものを補完する種種の対応が必要である,居住環境も,老人の特性を踏まえて物的側面より整備,改善されることを求められているが,どのような視点を持って高齢化社会に適合した居住環境を考えていくべきか,以下に2,3そのポイントを述べる.
(1)加齢による生理的機能の変化は個人差が大きいが,その特徴は,(a)防御反応の低下,(b)回復力の低下,(c)適応力の減退,に集約される.結果的には第一線活動からの引退を余儀なくされ,または日常生活も年を増すごとに徐々に不自由になり,最終的にはねたきり状態になることは,誰でも避けられないことでもある.心理的側面では,環境変化に対する適応性の減退,知的能力の低下などに伴い,最悪の場合は老人性痴呆になる.このように心身機能の低下は,その度合,訪れる時期により個人差があるが,老人を心身に何らかの障害を持つ者として理解することは基本的な視点である.
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