特集 人口問題
疾病構造の変化と零歳平均余命
正木 基文
1
Motofumi MASAKI
1
1東京大学医学部公衆衛生学教室
pp.383-388
発行日 1982年6月15日
Published Date 1982/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206532
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■零歳平均余命とその延長
ある集団について,出生時にあと何年生きることが可能であるかという平均生存年数は零歳平均余命とよばれ,これは一般に平均寿命として知られている.この零歳平均余命は,年齢階級別死亡率から導かれる年齢階級別死亡確率をもとに作成される生命表より一義的に定まる.一般に,ある年齢χ歳に達したものがこれから期待できる生存年数をχ歳の平均余命とよび,これはχ歳以降の死亡確率によってのみ決まる.したがって零歳平均余命は,全年齢階級における死亡確率を平均化したものとして得られる.
図1は,1920年代前半から1980年までの零歳平均余命と訂正死亡率の推移を示したものである.1921-25年において,日本の零歳平均余命は男子42.06歳女子43.20歳であった.その後死亡率の低下とともに零歳平均余命もしだいに延長し,1950年には男子59.57歳,女子62.97歳に,1980年には男子72.32歳,女子78.83歳に達した.現在日本はアイスランド,スウェーデン,ノルウェーなどとともに世界でも指折りの長寿国である.日本の零歳平均余命については,世界のトップクラスにあることと同時に,その延長がきわめて短期間のうちになされたことに注目すべきである.
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