大学とフィールド
振動病防遏のための15年—〈久留米大学医学部環境衛生学教室〉
高松 誠
1
Makoto TAKAMATSU
1
1久留米大学環境衛生学
pp.68-70
発行日 1981年1月15日
Published Date 1981/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206238
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●林業労働者の振動病
木曽谷の林業労働者が,チェンソーを使い始めて数年たったとき,冬の寒い日には手指が蒼白になる現象が起こり始めた.昭和40年3月,NHKはこれを「白ろうの指」としてテレビで全国に放送した.そして,白ろう病という名前がマスコミを通じて広く用いられるようになった.白ろう病は振動する工具や機械を使う労働者に起こる職業病である.今日では,必ずしも白ろう指が起こらなくても障害は進行していくので,白ろう病ではなくて振動病と呼ばれるようになった(写真1).
熊本大学の医学部にいた筆者も昭和40年以来,九州地区の国有林労働者に発生している振動病と取り組むことになった(図1).爾来15年間,振動病をなくするための研究ならびにフィールド活動を行なってきた.当初,南九州は林業の盛んなところであったが,白ろう指の発生には寒冷との関係が深いので,寒冷の地,北海道や東北地方に多くて,九州は温暖の地であるから発生は少ないだろうが,どの程度に発生しているかをみようと,鹿児島・宮崎県を中心として調査を行なった.
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