特集 人畜共通伝染病
高度危険ウイルス感染症の動勢
山内 一也
1
Kazuya YAMANOUCHI
1
1東京大学医科学研究所実験動物研究施設
pp.417-421
発行日 1980年6月15日
Published Date 1980/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206102
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■はじめに
高度の危険性を有するウイルス疾患のほとんどは,表1にまとめたようなウイルス性出血熱である.これらのうち,韓国型出血熱を除いては我が国に存在しない,いわゆる輸入伝染病に相当する.中でも,ラッサ熱,マールブルグ病,エボラ出血熱の3疾患は,厚生省国際伝染病委員会で「国内に存在せず,予防法,治療法が確立していないため,致命率が高く,かつ伝染力が強いので,患者および検体の取扱いに特殊の施設を必要とする疾患」という定義に基づく国際伝染病に指定されている.これらの疾患の病原体であるラッサウイルス,マールブルグウイルス,エボラウイルスはいずれも,予研の実験室安全管理規程の中の病原体の危険度分類で最高度の危険度であるクラス4に分類されている.いずれのウイルスも野生動物由来であることが証明され,またはその疑いが強く,人畜共通伝染病の病原体とみなされている.
これらの出血熱ウイルスのほかに,高度の危険性を有する人畜共通伝染病の病原体としては,東南アジア産のマカカ属サルに潜在感染し,サルを使用する研究者への感染の危険性が問題になっているBウイルスもある.しかし,Bウイルス感染はこれまで散発的に20数例が実験室内で起きているだけで,流行の様相を示したことはない1).したがって,実験室内感染防止とBウイルス・ブリーのサルの確保が当面の課題であって,ラッサ熱,マールブルグ病,エボラ出血熱のような防疫対策はとくに検討されていない.
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