綜説
金属中毒と感染
三浦 悌二
1
1帝京大学医学部衛生学
pp.276-286
発行日 1976年4月15日
Published Date 1976/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205176
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はじめに
金属中毒は,公衆衛生の面で近年特に重要な問題となったものの一つである.それは,水俣病とイタイイタイ病とで代表されるように,日本でだけ特に大規模な発生をみたことからも,日本ではその対策と研究とに特別の熱意をもたなければならない運命にある.その対策については,それが歴史的にみても大きな社会問題の一つとなり,日本における近代産業のあり方についての問題を提起し,その姿勢を正させ,日本の高度成長政策に対しても深刻な反省をもたらしたことは周知のごとくである.
水俣病などについては,特定の汚染源をつきとめ,それを処理したことにより,当面は患者の発生をくいとめることに成功はしたものの,金属汚染全般の進行については,近代文明そのものの責任を問うことともなり,その対策は将来ふたたび大きな問題となりうるものであろう.
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