発言あり
公衆衛生医師,なぜふえないか
H
,
N
,
M
,
K
,
Y
pp.289-291
発行日 1973年5月15日
Published Date 1973/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204657
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上医か,下医か
中国の古い言葉に,下医は病を治し,中医は人を治し,上医は国を治す,というのがあるが,今の医師の職業選択は,できるだけ下医になるような方向へと進んでいる気がしてならない.
職業選択というものには,どの時代でも,そのときの社会の姿が忠実に写されていると考えて差支えない.個人の適性とか,理念などというものは,むしろ2次的な要因としか思われないくらい,現実の職業選択は厳しいものである.大体において,医師養成コースをもつ大学を受験しようとするものが,人をいやし,人類を救おうとする熱意をもっていようがいまいが,また,医師としての適性(実際測定できるかどうかは別として)を有していようがいまいが,あるいは,相当に非道徳的・反人間的心情をかくしもっていても,このような個人の事情には一切かかわりなく,医師養成コースをもつ大学の受験倍率は社会的理由によって高いのである.もし将来,医師を職業として選んでも,他のどの職業とくらべても生活の安定に特に有利になるようなことがなくなれば,多分受験倍率は激減するであろう.つまり現在,医師になろうとしているものの多くは,医師になりたくて医師の道を選んだのか,はなはだ頼りない次第なのである.こう言い切ってしまうのは極端としても,入学の頃は明確でなかった医師の像が,教育の課程の中で定着して行くことも考えられよう.
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