特集 公衆衛生学の総合科学的深化
隣接諸科学からの批判と助言を求めて
三木 毅
1
1札幌医科大学
pp.87
発行日 1973年2月15日
Published Date 1973/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204613
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科学における専門化は,科学それ自体の進歩,発展を大いに促進したが,このような科学の分化によって,事象に対する知識の分立を招き,その総合的認識を阻害するきらいがある.このため,事象全体を統一的に把握しようとすれば,個別科学の限界をこえた総合体系を目指す新しい科学像を樹立すべきであるとする要請が高まってくる.また,このことは,個別科学のそれぞれの発展につれて,かつてその特定知識によって究明しつくされると考えられた対象が,隣接科学の協力なしには解明できない,あるいは協力によってより正確かつ容易に解明できる,換言すれば,専門領域の限界がその深部において明確にできない,ないしその限界をあげつらうことが,個別科学自体の進展を停滞させている現実を,反映している.
個別科学として歴史のあさい公衆衛生学は,その理論の形成と発展とにおいて,先行の個別科学の成果あるいは概念を取入れざるをえなかった.しかも,公衆衛生学は,"組織された地域社会の努力によって疾病を予防し,身体的・精神的機能の増進をはかる技術と科学"であるとすれば,そもそも学問的なりたちにおいて総合的性格をもつことになる.したがって,理論の形成において,かつまたその深化発展において,隣接科学との関連が必要とされ,総合科学的立場をたえず要請するのである.現に,公害のように,隣接科学の知識を有機的に取入れなければ処理できない多くの問題がある.
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