特集 医療保険抜本改正
Editorial
国民保健と「医療保険」の限界—医療保険再編成構想にひそむもの
東田 敏夫
1
1関西医科大学
pp.218-225
発行日 1972年4月15日
Published Date 1972/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204452
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Ⅰ.医療保険制度再編成案のねらい
わが国における医療の現実はまことに分裂症的様相を示している.ここ数年間をみても,大学紛争,国公立病院スト,自治体病院閉鎖から,心臓移植,薬害,医療公害,人体実験,ニセ医師の横行などがあり,日本医学会総会も「医の倫理」をスローガンとしなければならなかったし,「医療を告発する」市民の会も拡がっている.昨年は,「中医協メモ」をきっかけに「保険医総辞退」に突入した.しかも農村へき地の医療の空白はつづいている.この時,国民医療問題に関連して,見逃すことができないのは,社会保障制度審議会(以下「制度審」)と社会保険審議会(以下「保険審」)の答申を「露払い」として,自民党の「国民医療対策大綱」の基本路線が着々と進められるだろうということである.
昭和44年8月5日,厚生大臣は,制度審および保険審に,「現行医療保険制度を下記の方針のもとに再編成することについて」諮問した.①国民の健康管理体制に密着した医療保険制度を確立する.②社会保険方式を今後とも医療保障施策の中核とする.③保険料負担の均衡を図る.④給付の漸進的合理的改善とその格差是正を図る.⑤財政の長期的安定を図る.医療給付の適正化を図る措置を講ずる.そして,厚生省「医療保険制度改革要綱案」(以下「厚生省案」)を示し,具体的には,①勤労者保険と国民保険の二本立とし,健保家族を国保にくり入れる.②「社会保険公社」で管理運営する.
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