特集 地域福祉
福祉施設の社会化
牧里 毎治
1
Tsuneji MAKISATO
1
1大阪府立大学社会福祉学部
pp.794-800
発行日 1984年11月15日
Published Date 1984/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206950
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■はじめに
地域福祉の実践レベルで社会福祉施設の社会化が1970年代後半以降,ひとつの焦点になってきている.要援護者へのコミュニティ・ケアの関心からいえば,収容施設での処遇とホームヘルパーなどによる在宅処遇,あるいは近隣住民による援助活動が一体のものとして体系化される必要があるが,その方策についてはまだ試行錯誤の段階であって確立しているわけではない.施設の社会化は,施設処遇と在宅処遇を連続したものとして再編成する契機を含んでいる.見方をかえると,施設の社会化は,社会福祉施設が援護を要する階層に現に施設を利用している人びとのみならず,地域社会に潜在している要援護者予備軍にも生活圏と生活水準を保障するために何をなしうるのかが問われているといってもよい.しかしながら,たとえ施設の地域開放が進んでいると思われる先導的施設であっても,処遇の体系化を意識して実践している実例は多くない.
ところで,社会福祉施設と正式に呼称されているはずの施設がなぜ社会化と銘うって,論議されなければならないのか.そもそも社会的に存在しているのが,言葉の正しい意味からいって社会福祉施設なのであって,社会的に存在しない社会福祉施設などありえないはずである.であるにもかかわらず,あたかも社会福祉を社会化するというような矛盾した問題提起がなぜなされるのか腑に落ちない面もあろう.
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