特集 保健所再検討
主張
医療と保健所
若松 栄一
1
1医療金融公庫
pp.200-201
発行日 1971年4月15日
Published Date 1971/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204237
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保健所はいま大きな曲り角にきている,などと悠長なことをいっている段階ではない.保健所はとうの昔に"既にとり残された"ものになってしまっている.このままでいけばさらに無用の長物にさえなりかねない.なぜだろう.保健所が世の中の急速に移り変っていくニードをつかまえそこねたからである.
衛生行政のニードには2つの型がある.第一の型は専門家が専門的な学識や判断に基いて必要であることを主張し,啓蒙しながら推進していく性質のものであり,たとえば国民免疫の疫学的判断に基いて広汎な予防接種を企画実施していくようなものであり,これは場合によっては国民にいやがられるものであっても手を抜いてはならないものである.結核予防の仕事も一般国民の認識と関心が低下するにつれてそういう性質のものになっていくだろう.第2の型は国民感情が素朴に要求していることに答えてやるもので,すぐこないだまでは,がんの予防検診や専門医療機関の整備に対する要望であり,また交通戦争といわれる事態に直面しての救急医療をしっかりやってほしいという要望があった.最近は食品の安全対策や公害防止に関するすさまじいニードが高まっている.もちろん素朴な国民感情から発するものであるから,学問的立場からあるいは行政的な現実問題として実施の可能性に限界があり,また取捨選択に手順があることも当然である.
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