学会印象記
第43回日本産業医学会総会(徳島)の印象
川森 正夫
1
1群馬大学医学部公衆衛生学教室
pp.443-446
発行日 1970年7月15日
Published Date 1970/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204112
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久しぶりの徳島行,おりから万博の混雑と高知国有林の見学,さらに金沢の衛生学会に回るなど,列車と船の乗りつぎも複雑でスケジュールが立たぬまま,はじめて飛行機に乗る.支給旅費は片道の飛行機代でとんでしまうから,その後1週間は自腹で行動しなければならない.学会出張は公的なものか私用なのか,国民全体のための研究教育能力再生産のため・次代の医学を背負う医学生の教育のためなどの公的性格をもつものではないか,個人の趣味や成功のための業績発表の場所ではあるまい.
学会長福井教授のあいさつに「最近の産業の特徴として,新製品の生産には努力されるが,でき上った製品ならびにその生産過程が人体に及ぼす危害については必ずしも十分に検討されることなく,……その結果いろいろの中毒や職業病の発生をみる危険性があり……新産業に従事する労働者は,いわゆる体をはっての労働ということにもなります」と産業界の現状を受けとめ,なお「本医学会は,労働者の健康を維持増進することを目標として研究発表を行ない,討議し,対策が検討される学会です」と労働者の生命と生活を守るという産業医学会の使命を明らかにしておられる.あたりまえのことであるが,ひかえ目ながら産業医学研究者の良心の証言であり,今回の産業衛生協会定かん改正の意図も,従来あいまいであったこの辺の目的を明確にしていこうとする人たちの努力のあらわれであろう.
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